大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和29年(オ)894号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人根本松男、同松本乃武雄の上告理由第一点乃至第三点について。

被上告代理人が、第一審口頭弁論において上告代理人主張にかかる「被上告人が上告人の父暁(被上告人の叔父)から金一一万円を受取つた事実」を認める旨述べたことは所論のとおりである。しかしながら右の事実は、本件主要の争点たる「本件土地を安藤正文から買受けた者は被上告人なりや上告人なりや」の点に関し、この事実認定の資料となり得べき、いわゆる間接事実に過ぎないのであつて、かかる事実については、たとえ当事者の自白ありとしても、裁判所は必ずしも、その自白に拘束されるものではなく、当事者が後にその自白の内容を訂正した場合において、裁判所はその訂正された自白の内容を事実に合するものとして主要争点たる事実の有無の判断の資料としてもさしつかえないものと解すべきである。原審は、その判示するところから推測すれば、結局被上告代理人が後に訂正した自白の内容に従つて、たとえかかる事実ありとしても、本件不動産の買主を被上告人であると認定するにその反証とするに足らないと判断したに帰着するものであつて、何等違法はなく、論旨は、右自白にかかる事実がいわゆる「間接事実」に関するものであることを度外しての立論であつて採用することはできない。

同第四点について。

原判決の認定するところによれば、本件土地は被上告人の所有であり、上告人名義の所有権取得の登記は事実に吻合しないものであること明らかであるから、特段の契約関係等のみとめられない本件において、被上告人が上告人に対し右登記の抹消を請求し得るものとした原判決は正当であつて論旨は理由がない。

同第五点について。

所論は結局原審が適法にした証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰着するものであつて適法な上告の理由とならない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例